
日経平均株価は2026年2月19日(木)に終値57,467円を付け、今年2月10日に記録した史上最高値57,650円まで183円という射程圏内に達しました。前日比323円高という続伸の背景には、米ハイテク株高に連動した半導体関連の買いと、155円台へ急落した円安効果が同時に機能しています。しかしこの上昇の真の分水嶺は、今から5日後に控えています。2026年2月25日(水)の米東部時間17時(日本時間2月26日早朝)────エヌビディアのQ4 FY2026決算発表です。
AI実需化元年とも言える2026年に入り、市場は「AIバブルか、本物の需要サイクルか」という問いに対する答えを、一企業の決算に求め続けています。アナリスト合計コンセンサスは売上高660億ドル超、EPS 1.46ドルを予測。ただし今回の決算で最も重視されるのは、実績数字ではなくジェンセン・ファン(Jensen Huang)CEOが示すQ1 FY2027へのガイダンスです。
個人投資家にとってこの1週間は、エヌビディア決算という単一イベントへの備えだけではありません。3月末を権利確定日とする配当取りの需給、155円台での円安進行と日銀介入リスク、そして上場企業5年連続最高益(2026年3月期)という好業績相場の持続性──これら3つのテーマを同時に整理し、今日の立ち回りを組み立てる必要があります。
昨日の市場を振り返る──「一時最高値超え」の意味

2月19日の東京市場は、前日の米ハイテク株高を受け、寄り付きから半導体関連銘柄に強い買いが入りました。アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)といった製造装置メーカーが指数を主導し、前場中には一時57,642円──最高値57,650円まで8円という水準まで迫りました。
(参照:日本経済新聞・マーケット速報)
終値57,467円は前日比+323円(+0.57%)。グロース250指数も続伸し、好決算銘柄に幅広い買いが広がりました。この上昇を支えた主要ファクターを整理すると、次の3点に集約されます。
1. 米国ハイテク株高の波及
前日(米国時間2月18日)のナスダック総合指数の上昇が、東京市場の半導体・AI関連銘柄を直撃しました。エヌビディア株は2月17日時点で189.57ドル(15分ディレイ)と底堅く推移しており、2025年4月安値86.62ドルから実に143%上昇した水準での横ばい推移が続いています。決算前夜の「期待買い」が東京市場にも波及した形です。
2. 対米投資銘柄への資金流入
ソフトバンクGをはじめ、約20社が「対米投資」の日米連合に参加する方向と報道され、この政策テーマが日本株全体の底上げに寄与しました。日経新聞の「東証大引け」記事に「対米投資銘柄に買い」とあるように、政策期待を原動力とした物色も活発でした。
(参照:日本経済新聞・東証大引け記事)
3. 上場企業5年連続最高益
日本経済新聞が同日報道した「上場企業5年連続最高益、2026年3月期は減益予想から一転」というニュースは、個別企業の底上げに加え、指数全体の楽観論を補強しました。
ただし、この強い上昇の陰に、無視できない為替の歪みが発生しています。
「円安155円」が示す矛盾──30日間の相関が逆転した
通常、日経平均と円安はセット──これは多くの個人投資家が持つ基本認識です。しかし足元のデータはその常識に疑問を突きつけています。
2月19日午後、円相場は1ドル=155円台に急落しました。アルゴリズム(高速自動売買)取引が介入期待で積み上げた円買いポジションが一気に崩れたことが原因と報道されています。(参照:日本経済新聞・円相場急落記事)
注目すべきは、直近30日間(2026年1月5日〜2月16日)のドル円と日経平均の相関係数が、なんと-0.49を示していることです。(参照:lets-gold.net・相関係数推移)つまり「円安になるほど日経は下がる」という逆相関の傾向が、この1か月で顕著になっています。
90日間で見ると相関係数は0.20にとどまり、「相関なし」に近い水準。従来のアベノミクス型の「円安=輸出企業株高=日経高」の図式が崩れかけている可能性があります。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏が「ドル安でも円安という珍現象が2026年の見極め課題」と指摘するように、今の円安は必ずしも「日本経済の強さ」を反映していない側面があります。
(参照:時事ドットコム・唐鎌氏コラム)
155円水準は、2025年11月のG20後に政府・日銀から牽制発言が出た水準に近く、介入警戒ゾーンとして意識されます。三井住友DSアセットマネジメントの見通しでは2026年末ドル円は150円、年内のレンジ中心は155円としており、足元は「上値の節目」に差し掛かっている格好です。(参照:三井住友DSアセットマネジメント・為替見通し)
エヌビディアQ4 FY2026決算──何が問われるのか

2026年2月25日(水)の米東部時間17時(日本時間26日早朝6時頃)、エヌビディアはQ4 FY2026(2025年11月〜2026年1月期)の業績を発表します。ここで確認しておくべき前提数字を整理します。
前四半期(Q3 FY2026、2025年8月〜10月期)の実績は、売上高570億ドル(前年同期比+62%)、EPS 1.30ドル(同+60%)で、どちらもウォールストリートのコンセンサスを上回りました。しかし株価は翌日3.15%下落──「予想を上回っても下がる」という構造が定着しています。(参照:IG International・NVIDIA Q4 FY2026 Preview)
Q4のコンセンサス予測はこうなっています。
売上高:650〜660億ドル(前四半期比+14〜16%、前年同期比+78%以上)
EPS(調整後):1.46ドル
粗利益率:約75%(Q3の73.4%から改善)
データセンター部門:590億ドル超
(参照:Leverage Shares・NVIDIA Q4 Preview)
ただし、アナリストが本当に見たいのは過去の数字ではなく、Q1 FY2027(2026年2月〜4月期)のガイダンスです。市場は次四半期売上高を750億ドル前後と想定しており、ここに向けてBlackwellアーキテクチャの出荷加速と、次世代Rubinプラットフォームへのスムーズな移行が示せるかどうかが最大の焦点です。
IG Internationalの分析によれば、2026年のクラウド関連設備投資は前例のない6,800億ドルに達する見通しで、「Big Five」と呼ばれるAmazon、Alphabet、Meta、Microsoft、Oracleが主要顧客として需要を支えています。Blackwellは依存在庫がほぼ「完売」状態が続いており、供給制約が緩和されれば成長の天井がさらに高まります。(参照:FinancialContent・Nvidia’s 66B Moment)
市場反応の3パターン
エヌビディア決算後の株価は、過去7回中3回が翌日下落という記録があります。今回も反応は一様ではありません。大きく3つのシナリオを想定できます。

シナリオA(強気):実績超過+ガイダンス上振れ
売上高660億ドル超え、かつQ1 FY2027ガイダンスが750億ドル超のケースです。粗利益率75%超も達成できれば「完璧な決算」として評価され、NVDA株は短期的に200ドル近辺を試す可能性があります。日本時間2月26日(木)の東京市場では、アドバンテスト・東京エレクトロン・ディスコが連鎖高し、日経平均は57,650円の最高値更新が視野に入ります。
シナリオB(中立):実績超過・ガイダンスは概ね想定内
売上高はコンセンサス超えでも、ガイダンスが市場期待の700〜750億ドルレンジの下限に近いケース。「目新しさに欠ける」として株価は概ね横ばいか小幅下落(-1〜-3%程度)。東京市場の半導体株も利確に押される可能性はあるものの、全面安にはなりにくい展開です。
シナリオC(弱気):データセンター部門が再び予想未達
Q3に続いてデータセンター部門が市場予想を下回った場合、AIバブル懸念が再浮上します。中国向けGPU(H20シリーズ)の輸出規制による売上空白も注目されます。NVDA株-5%超のケースでは、翌26日の東京市場で半導体セクターに強い売りが入り、日経平均は一時的に56,000円台前半への調整リスクが高まります。
3月配当権利取りの需給──今から意識すべきスケジュール

エヌビディア決算と並んで重要なのが、3月末の配当権利確定に向けた需給です。2026年3月期は日本の上場企業が「5年連続最高益」を達成する見込みで、増配企業も多数存在します。配当取りに向けた機関投資家・個人投資家の動きは、2月下旬から3月末にかけて相場の下値を支える方向に機能します。
2026年3月期の権利確定スケジュール(月末確定銘柄):
権利付き最終売買日:3月27日(金)
権利落ち日:3月30日(月)
権利確定日:3月31日(火)
(参照:モネックス証券・権利確定日解説)
特に注意したいのが日経平均先物(6月限)の割安バイアスです。楽天証券のアナリスト、窪田真之氏が指摘するように、3月の権利付き最終売買日(3月27日)まで、日経平均先物は現物指数より約250円程度低く推移する傾向があります。これは先物に配当相当額が含まれないためで、「先物が安い」からといって弱気のシグナルにはなりません。(参照:トウシル・楽天証券・窪田真之氏レポート)
3月に向けた機関投資家の行動も需給を左右します。国内機関投資家(いわゆる「ザ・セイホ」と呼ばれる生命保険会社など)は、3月期末決算に向けて運用残高の調整(レパトリエーション:海外資産の国内還流)を行う傾向があります。これが「期末の円高要因」として市場で語られる現象であり、現在の円安155円と組み合わせると、3月後半に向けて円高への揺り戻しリスクが高まる構造になります。
「どう動くか」──今週・来月の立ち回りを整理する

以上を踏まえ、個人投資家が今週から3月末にかけてどのように立ち回るかを整理します。
今日(2月20日)
昨日の続伸を受けてSGX(シンガポール証券取引所)日経先物は57,040円前後(前日比小幅安)で推移しており、寄り付きは若干の利確売りが予想されます。ただし基調は崩れておらず、55,500〜58,000円のレンジ(2月第3週の市場予想レンジ)内での動きが続く見通しです。(参照:ザイ・オンライン・週間予想)
エヌビディア決算前夜にあたる今日は、過去の事例(Q3決算前の2025年11月18日に日経が-1,620円という大幅下落を記録)を教訓として、半導体ポジションの過重参入は避けるのが無難です。一方、内需・ディフェンシブ株(食品、ヘルスケア、通信)への分散は、決算リスクの緩衝材として有効です。
2月25日(エヌビディア決算当日)
この日は米国市場でNVDAの値動きに追随する動きが先物市場に出ます。日経先物CFDを翌朝までウォッチし、決算後の時間外取引でNVDA+3%以上なら半導体株への翌日バイ、-5%以上なら手仕舞いを検討するという「結果見てから動く」姿勢が合理的です。
3月配当取り期間(2月下旬〜3月27日)
上場企業5年連続最高益と増配傾向を背景に、高配当銘柄への積み増しは理にかなっています。ただし、配当利回りだけでなく「配当性向(配当金÷純利益)が100%を超えていないか」「業績予想が下方修正されていないか」を確認するのが基本です。(参照:ダイヤモンドザイ・3月権利銘柄解説)
また3月後半(20日以降)は、機関投資家の期末ポジション調整による需給変化を意識する必要があります。特に円安が急速に修正されるタイミング(155円から152円台以下への急進)には、外需株の一斉利確が発生しやすいため、円安依存ポジションのリスク管理を怠らないようにしてください。
日本の半導体・AI株の中長期展望

エヌビディアをきっかけとした短期の需給変動を超えて、日本のAI・半導体セクターの中長期ポジションを考えるうえで重要なのが、グローバルAIインフラ投資の受益構造です。
エヌビディアのGPU製造は台湾TSMCが担っていますが、HBM(高帯域幅メモリ)はSKハイニックス・マイクロン・サムスンが供給し、CoWoS先端パッケージングも主にTSMCで行われます。しかし、この工程を支える製造装置の多くは日本企業が提供しています。具体的にはアドバンテスト(テスタ)、東京エレクトロン(成膜・洗浄装置)、ディスコ(切断・研削)、SCREENホールディングス(洗浄)、レーザーテック(EUVマスク検査)などが代表格です。
AIクラウドの設備投資は2026年に6,800億ドルへ迫る見通しで、エヌビディアの顧客「Big Five」はいずれも2026年の設備投資計画をさらに上積みしています。このAIインフラ投資が続く限り、日本の製造装置・精密測定・素材サプライヤーへの需要は構造的に続きます。
高市政権の政策テーマ17分野のなかにも半導体・AIインフラが組み込まれており、「高市銘柄」として国内政策の後押しも受けやすい構造です。ただし政策銘柄は選挙(衆院選2026年実施予定)の結果に株価が敏感に反応することに注意が必要です。
日本株全体として、エコノミストのエミン・ユルマズ氏は「2026年中の日経平均6万円到達が視野に入る」と述べており、51,200円のレジスタンス突破後に5万円台から6万円台へのステージ移行が進んでいると指摘しています。(参照:外為どっとコム・エミン氏インタビュー)
まとめ──今週のポイントを3点で整理する
2月20日(本日)から2月26日(エヌビディア決算翌朝)にかけての最重要ポイントをまとめます。
① エヌビディア決算(2/25)は「実績」より「ガイダンス」が肝
売上高660億ドル超えは前提として、Q1 FY2027ガイダンスで750億ドルを上回れるかが焦点。Blackwell粗利率75%超回復と次世代Rubinの移行シナリオにも注目してください。
② 円安155円は「諸刃の剣」
日経との逆相関(-0.49)が示すとおり、今の円安は輸出企業の恩恵を超えて財政リスクプレミアムや介入リスクを内包しています。3月の期末配当還流(機関投資家のレパトリ)でさらなる円安修正が入るリスクを意識してください。
③ 3月27日(権利付き最終日)まで日経先物は250円程度の割安バイアス
先物を現物の代替として見る際に、この配当落ち調整を忘れると「現物より安い」という誤った弱気判断につながります。先物は3月27日以前と以降で読み方を変えてください。
参照先
- 日本経済新聞・マーケット速報
- 日本経済新聞・ドル円チャート
- IG International・NVIDIA Q4 FY2026 Earnings Preview
- Leverage Shares・NVIDIA Q4 FY2026 Preview
- FinancialContent・Nvidia’s $66B Moment
- マネクリ・マネックス証券・岡元兵八郎氏コラム
- 野村ウェルスタイル・エヌビディア決算解説
- 楽天証券トウシル・窪田真之氏レポート(先物割安バイアス)
- 野村証券ウェルスタイル・3月連続増配銘柄
- 時事ドットコム・唐鎌大輔氏コラム(ドル安でも円安)
- 三井住友DSアセットマネジメント・2026年ドル円見通し
- 外為どっとコム・エミン・ユルマズ氏インタビュー
- 外為どっとコム・日経平均株価と衆院選検証
- ダイヤモンドザイ・3月権利確定銘柄解説
- 日本取引所グループ・配当落情報
- TradingView・NVIDIA Q4 2026 Preview
- lets-gold.net・ドル円と日経平均 相関係数
- TradingKey・エヌビディア株2026年展望


