2026年2月19日、日経平均株価は終値57,467円(前日比+323円)と続伸し、年間で3番目に高い引けとなりました。直近の年初来高値は2月12日のざら場高値58,015円(参照:Yahoo!ファイナンス 日経平均)、終値ベースの最高値は2月11日の57,650円で、この日はそこまで約520円差まで迫った水準です。
それでも市場は最高値圏への再接近を着実に進めており、全体の雰囲気はポジティブでした。前日18日には第2次高市早苗内閣が発足し、政策推進への期待が下値を支えています。さらに米国市場ではエヌビディアとメタがAIインフラ構築で合意したと報じられ、ハイテク株全般に追い風が吹く中で東京市場もスタートを切りました。
ところが、この日の市場は単純な「半導体相場の続き」ではありませんでした。アドバンテストへのランサムウェア攻撃、リガクHDの急騰、サイバーセキュリティ株の急動意──2/19は、相場の多様性と突発的リスクが同時に顕在化した、実に示唆に富む一日でした。
2/19最大のニュース──アドバンテストに「ランサムウェア」という誤算

この日の最大のニュースは、皮肉にも日経平均への寄与度トップであるアドバンテスト(6857)のサイバーインシデント発表でした。
(参照:Bloomberg日本版)によると、アドバンテストは2月19日午前11時、第三者による不正アクセスによってネットワークの一部でランサムウェアが展開された可能性があると発表しました。同社は2月15日に社内IT環境の異常な動きを検知し、即時に対象システムを隔離。外部のサイバーセキュリティ専門家とも連携して対応にあたっているとしています。
(参照:株探ニュース 先物昼市況)が伝えるように、発表前まで高値圏で推移していたアドバンテスト株は発表後に急落し、一時前日比4.6%安に転じました。日経平均への寄与度が最上位の銘柄だけに、「先物主導のロングが手控えられる」という状況が生まれ、指数の上値を重くしました。
悪材料が「別の銘柄を動かす」──サイバーセキュリティ株の急動意
株式市場において、一企業の悪材料が別の企業の追い風になることがあります。今回がその典型例でした。アドバンテストのインシデント発表を受けて、FFRIセキュリティなどサイバーセキュリティ関連株が急動意し、まとまった資金が流れ込みました(参照:Yahoo!ファイナンス マーケット日報)。企業のサイバーリスクへの意識が改めて高まり、セキュリティサービス・ソリューション会社への需要拡大が連想されたためです。
「AI半導体の雄がサイバー攻撃の被害者になる」──この現実は、AIインフラが成熟するにつれてセキュリティ需要も構造的に拡大するという投資テーマを鮮明に浮き彫りにしました。
急騰したリガクHD──「半導体以外」への物色が示すもの

2/19で注目された上昇銘柄の筆頭はリガクHD(268A)です。前日比+20%超という急騰を演じ、プライム市場の値上がり率ランキング首位(参照:日本経済新聞マーケット)に躍り出ました。
リガクHDは計測機器・精密分析装置メーカーで、X線を使った構造解析や薄膜評価装置に強みを持ちます。今回の急騰の背景にあるのは、キオクシア(旧東芝メモリ)との関係強化と政策投資銀行による投融資恩恵の思惑(参照:株探ニュース)です。
この動きはある意味で象徴的です。市場の視線は、アドバンテスト・東京エレクトロンといった「顔の見えた半導体主力株」から、次のレイヤー──精密計測・材料解析という半導体の「上流工程支援」領域にまで向き始めています。半導体がさらに微細化・複雑化するほど、加工の前後で高精度な計測・分析が不可欠になるからです。
指数を支えた東京エレクトロンとソフトバンクG
アドバンテストが下落するなかで、指数を支えたのは東京エレクトロン(8035)とソフトバンクグループ(9984)でした。大引け時点の日経平均への寄与度では東京エレクトロンが141.39円の押し上げ効果を発揮。ソフトバンクGはAIデータセンター向けガス火力発電プロジェクトの中軸としての役割が再び注目を集め、頑強な値動きを見せました(参照:みんかぶ アドバンテスト関連ニュース)。
2月19日のソフトバンクGについては、日米連合による対米投資計画(約20社が参画)が報じられたことも材料となっており(参照:日本経済新聞マーケット)、単なる「ARM株を持つ持ち株会社」という見方を超えて、日米AIインフラ構築の中軸プレイヤーとして市場が評価し始めている様子がうかがえます。

2/19が示した相場の多様性
2/19の一日を俯瞰すると、相場が「半導体一色」でないことが改めて確認できます(参照:Yahoo!ファイナンス マーケット日報)。当日の構図を整理するとこのようになります。
── 上がったもの:東京エレクトロン(AI装置・141円寄与)、ソフトバンクG(AI投資)、リガクHD(+20%超・精密計測)、GSユアサ(蓄電池・電力インフラ)、FFRIなどサイバーセキュリティ株
── 下がったもの:アドバンテスト(ランサムウェアインシデントで一時▲4.6%)
── 相場の地合い:ドル/円が155円台に円安進行、第2次高市内閣発足直後で政策期待継続
この多様性は、AI半導体が指数の基礎を作りながら、その「周辺テーマ」への資金の裾野が広がりつつあることを示しています。
注目テーマ5つ──「半導体の隣人たち」を読む

2026年2月時点の市場を俯瞰すると、AI半導体セクターの外側に少なくとも5つの有力な投資テーマが存在しています。
テーマ1:サイバーセキュリティ──AIインフラの「守護者」
今日のアドバンテスト事件が象徴するように、AIインフラの拡大はサイバーリスクの拡大と表裏一体です。重要インフラ・半導体工場・データセンターへの攻撃は高度化しており、対応するセキュリティサービスの需要は構造的に拡大します。FFRIセキュリティやラックホールディングスなど国内のサイバーセキュリティ銘柄が急動意する場面は、今後も繰り返されると考えられます。
テーマ2:精密計測・分析装置──半導体「上流」の見えない主役
リガクHDのような精密計測・材料分析の企業は、半導体の微細化・積層化が進むほど重要性が増します。同分野ではリガクHDのほか、日本電子(6951)、堀場製作所(6856)なども中長期的な成長期待を持つ銘柄として位置づけられます。
テーマ3:AI電力インフラ──エネルギーという「AI相場の隣人」
(参照:GFS Tokyo 2026年投資ガイド)が指摘するように、データセンターの急増は電力需要の爆発的増大を伴います。GSユアサのような蓄電池・電力貯蔵系、変圧器・電力インフラ設備のメーカーが、「AIの電力問題」という別ルートで恩恵を受ける構図が成立しています。
テーマ4:防衛・宇宙──「国策」のもう一つの柱
(参照:楽天証券トウシル 2026年注目テーマ)によれば、2026年も防衛・宇宙は有力な投資テーマです。2026年度の防衛関係費は過去最大の約9兆円に達しており、三菱重工(7011)・IHI(7013)・川崎重工(7012)などが物色されています。
テーマ5:フィジカルAI──ロボティクスと産業機械の覚醒
AIが「画面の中の存在」から「物理世界で動く存在」へと変化する「フィジカルAI」の流れは、ファナック(6954)や安川電機(6506)、THK(6481)などの産業ロボット・精密機器メーカーへの関心を高めています。

日経平均5万7000円台の「地図」を描く

2/19現在の相場の全体構造を整理します。
現在地の確認
日経平均は年初来高値(2/12のざら場高値58,015円)から約550円下の位置で推移しており、最高値更新を試みる段階にあります。2/19終値57,467円は「年間3番目に高い引け」(参照:Yahoo!ファイナンス マーケット日報)に相当し、相場の強度は維持されています。
上昇を支える3つの柱
第一の柱は「AI需要の継続」です。エヌビディア・メタのAIインフラ合意に象徴されるように、グローバルなAI投資の勢いは止まっていません。東京エレクトロン・ソフトバンクGがその恩恵を受け指数を支えています。
第二の柱は「第2次高市内閣への期待」です。積極財政・国内投資促進・防衛費拡大という政策方向性は、製造業・インフラ・防衛関連への資金流入を促します。ドル/円が155円台で推移する円安環境も輸出企業の業績を下支えしています。
第三の柱は「企業業績の増益継続」です。上場企業の3社に1社が最高益を更新する勢いで(参照:日本経済新聞)、ファンダメンタルズの裏付けが相場の底を固めています。
注意すべきリスク
最大のリスクはAI投資への過度な集中と、それが崩れた場合の反動です。今日のアドバンテスト事件は「単一銘柄への依存が指数全体の脆弱性を生む」ことを示した実例でした。加えて、日銀の追加利上げによる円高進行、対中輸出規制の強化、米国のAI関連規制なども常に視野に入れる必要があります。
まとめ──2/19が教えてくれたこと
2月19日の市場は、ある意味で「2026年相場の縮図」でした。アドバンテストというAI半導体の象徴がサイバー攻撃を受けて急落する一方、リガクHDが急騰し、FFRIなどセキュリティ株が動意し、東京エレクトロンが指数を牽引する。「半導体が悪いと全部ダメ」ではなく、「半導体が揺れることで新たな物色が生まれる」というより複雑で成熟した相場の姿が見えてきます。
この相場で求められるのは、少数の有名銘柄に依存するのではなく、相場の構造変化を読んで「隣接するテーマ」への視野を広げる姿勢ではないでしょうか。日経平均5万7000円台は、決してひと握りの半導体銘柄だけが作っている数字ではないのです。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。投資の最終判断はご自身の責任において行ってください。
参照先一覧
- (参照:Yahoo!ファイナンス 日経平均株価)
- (参照:Yahoo!ファイナンス マーケット日報 2/19)
- (参照:Bloomberg日本版 アドバンテスト不正アクセス)
- (参照:株探ニュース 先物昼市況 2/19)
- (参照:日本経済新聞マーケット)
- (参照:日本経済新聞 日経平均チャート)
- (参照:みんかぶ アドバンテスト株価・ニュース)
- (参照:楽天証券トウシル 2026年注目テーマ)
- (参照:楽天証券トウシル セクターレポート半導体装置)
- (参照:IG証券 2026年日本株見通し)
- (参照:GFS Tokyo 2026年投資ガイド)
- (参照:ダイヤモンド・ザイ 2026年株予測)

